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zoom RSS ふうの勝手お酒物語 第八夜 月は東に日は西に (徳田)

<<   作成日時 : 2009/03/01 12:51   >>

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「たたむ事にしましたよ」
いつものメンバーでさっきまで陽気に飲んでいた徳田がぽつりと云った。
何時の間にか他の人たちは引き上げたようだ。


「今なら永年勤めてくれた従業員にいくらかまとまったお金も渡せるし・・」

徳さんの会社がどうもいけないらしいと聞いたのは一年ほど前だったように思う。


「な〜に、会社と云っても大したことはないよ、家族と従業員合わせて7人の小さな町工場だ」
いつだったか周りから「社長さんだから」と冷やかされて徳さんは大いに恐縮していた。


「それでも、北海道から出てきてろくに読み書きも出来なかった職人の祖父が一人で築き上げた工場だからなぁ」
「親父も朝早くから夜遅くまでお袋と2人で働き詰めに働いてあの工場を守ってきた」

しばらく間をおいて徳さんは自嘲気味に笑った。

「暢気な三代目にはあんなちっぽけな工場だって荷が重いよ」


そんな徳さんの酒の飲み方はいたって淡白だ。
愉快に飲んで愉快に語って、程よいところで引き上げる。

趣味も多彩なようだがあまり深追いせず、可と云ってその含蓄はマニアを驚かせるものがあるらしい。
なかでも三味線の腕は一級で「もっと身をいれれば・・・」としきりにその腕を惜しむ師匠もいた。

「なにごともほどほどが最良、平凡な町工場の親父にはそれが丁度いいのですよ」


「男山をもらおうかな」珍しく徳さんは冷酒を注文した。


「夜中にトイレに起きると薄暗い仕事場の片隅で祖父がこれを飲んでたよ」
「もっとも、こんなに上等な男山じゃあなかったがね」

「その頃はまだ他人もいなくて家族だけの家内工業のよう仕事場だったがね」

「その仕事場だけが自分の居場所のような祖父だったから、一日を終えて一人で飲む酒が唯一の楽しみだったのだろう」


♪月は東に〜 日は西に〜〜♪

端唄のような調子で徳さんは歌っている。


「いつだったか一人で飲む祖父の背中からこの歌が聞こえてきた」
「子供心にも驚いたね、祖父が歌うなんて・・・」

「それが最初で最後の一回だったがね」


このご時世、徳さんがどれだけ必死になって工場を守ってきたかわたしは知っている。
「なにごともほどほど」とは工場だけに全精力をつぎ込む徳さんの照れだ。


♪月は東に〜 日は西に〜〜♪
いま、徳さんは再び歌う祖父の背中を見ている。


※これはあくまで私の趣味の文章です。
  特定のお酒を薦めたり、また批評するものではありませんし
  特定の業者ともまったく関わりのないものです。
  文中に不適当な表現や表示がありましても、ご了承下さるよう
  お願い致します。


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